SES(システムエンジニアリングサービス)業界では、スキルシートが案件のオファーが出るかどうかの重要な判断材料になります。スキルシートは、エンジニアの技術力や経験を企業に伝えるための書類であり、案件獲得のために最重要と言っても過言ではありません。
スキルシートがしっかりと作成されていれば、案件のマッチング率が上がり、希望するプロジェクトへの参画がスムーズになります。しかし、内容が不十分だったり、誤った書き方をしてしまうと、書類選考の段階で落とされるリスクが高まります。
本記事では、SES業界においてオファーをもらいやすいスキルシートの書き方を詳しく解説していきます。
SESのスキルシートとは?その重要性とは?
まずは、そもそもSESのスキルシートが何を目的としているのかを整理してみましょう。SESのスキルシートとは、クライアント企業やプロジェクトの採用担当エンジニアに向けて、自身の経験・スキル・担当業務などをわかりやすく示すための資料です。SESエンジニアは、契約先企業でのプロジェクト参画がメインとなるため、「どんな技術スタックを扱ってきたか」「どのようなプロジェクトでどのくらいの期間、どんな作業を担っていたのか」を詳細にまとめておくことがとても大切です。
スキルシートが重要な理由は、大きく分けて以下の3点です。
- 客観的な評価材料を提示できる
面接時のヒアリングや、サマリ(応募者の基本情報や条件面、担当者のおすすめポイントなどをまとめた文章)と併せて、クライアントの担当者や営業があなたのスキルを判断する基準になります。とりわけSESの場合、書類審査の段階でお見送りになることも多いため、最初の印象を左右する大事な資料です。 - 案件とのマッチング精度が高まる
スキルシートを見れば、実務レベルで扱える技術や、今後どんなプロジェクトに参画したいかといった希望が一目でわかります。明確な内容であればあるほど、クライアントやエージェントはプロジェクトとのマッチングをスムーズに行えるため、後々のミスマッチも減りやすいです。 - 短時間で自分をアピールできる
面接は通常、長くても30分〜1時間程度。その限られた時間で技術経験を網羅的に語るのは難しいですが、あらかじめ整理されたスキルシートがあれば、効率よく概要を伝えられます。面談前にスキルシートを見てもらえるなら、当日のやり取りがさらにスピーディーになるでしょう。
SESのスキルシートでオファーをもらうためのポイント
次に、SES業界ならではのスキルシートを作成する際のポイントを解説していきます。単なる職務経歴書以上に、業務内容や技術スキルに対するアピールが重要となります。
採用担当者はどこを見ている?評価基準を知ろう
SES案件を担当する採用担当者やクライアント企業は、主に以下のような観点でスキルシートをチェックしています。
- 技術スタックの深さ・幅
使用している言語やフレームワークが何か、どれくらいの期間・レベルで扱ってきたか。たとえばJavaなら、どのバージョンやライブラリを使っていたか、ScalaやKotlinなど周辺技術にも触れた経験があるか、といった点を細かく見られることもあります。 - 業務スコープと担当フェーズ
要件定義から設計・開発・テスト・運用保守までのうち、どのフェーズを経験したのか。大規模プロジェクトに参加していた場合でも、実際の担当がテストのみだと評価が変わるケースがあるため、フェーズごとに明確に記載することが大切です。その他品質保証のためのOSSのライセンス確認のようなメインの業務ではないような細かい作業に関しても記載しておくと、似たようなことをする案件に当たった場合にマッチング度が高いと判断されやすくなります。 - コミュニケーション力や実務への柔軟さ
技術力だけでなく、クライアント先での折衝やチーム内のコミュニケーションが円滑にできるかも見られています。いろいろなタイプの現場にアサインされることが多いSESだからこそ、業務内容に応じて柔軟に動けるかどうかは大きな評価ポイントです。実は多くの案件でコミュニケーション力が必須条件として指定されているため、自身のコミュニケーション力が伝わるエピソードを盛り込むなどするとアピールになります。
「経験・スキル」を具体的に記載する方法とは?
スキルシートにおける「経験・スキル」の書き方で大事なのは、“具体的に書くこと”です。以下のような工夫を取り入れるとわかりやすくなります。
- 扱った技術の単なる羅列だけでなく、開発規模や実装内容も添える
ただ「Javaを使用しました」よりも、「Java(バージョン8)を用いて100万人規模のユーザーを抱えるWebアプリケーション開発を担当。ユーザー登録機能や在庫管理システムのバックエンドロジックを実装」のように具体的に書くとイメージが伝わりやすいです。 - プロジェクトごとに期間を明記
2024年1月〜2025年3月のように案件に携わった期間と、プロジェクト名(あればクライアント業種)と、具体的な担当工程を記載しましょう。担当期間が長いほど「その分野での経験値が高い」と判断されやすくなります。 - 成果物や使用ライブラリの名称を盛り込む
WebアプリならSpring BootやLaravel、モバイルアプリならFlutterやReact Nativeなど、使用ライブラリやフレームワークまで書くと、より専門的なアピールになります。どの技術が案件で求められるかは千差万別でかなりの幅があるため、扱った技術や言語、アーキテクチャ、開発手法(アジャイル、スクラム、TDDなど)については全て書くようにしましょう。
スキルシート作成のNGポイントとは?
次に、スキルシートを作成するうえでやりがちな失敗例をチェックしましょう。中身が充実していないと、せっかくの面談機会が遠のいてしまうかもしれません。
抽象的な表現はNG!具体的な実績を書くべき理由
採用担当者から見て最も残念なのは、「Javaが得意です」「コミュニケーション力が高いです」といった曖昧な表現ばかりのスキルシートです。抽象的な表現だけでは、実際にどの程度の技術力があるのかがイメージしづらいのです。
たとえば「Javaが得意です」という記載に対して、以下の情報を追加すると良い印象を与えられます。
- Javaのバージョンと使用歴
- 具体的なフレームワーク名(Spring、Strutsなど)
- どのような規模や機能を作ったか
こうした細かい情報を肉付けしていくだけで、かなり説得力が増します。
嘘は厳禁!過大評価したスキルのリスクとは?
スキルシートに記載している内容は、実際の面談や現場配属後に確認されることが多いです。もしスキルを過大に書いてしまうと、いざ現場にアサインされた時に対応できず、周囲に負担をかける可能性があります。やりたいことを書くのは良いですが、実力の程度は正直に伝えるのが大切です。
また、嘘が発覚すると信用を失うだけでなく、自分自身もスキル不足で苦労することになります。合わない現場に配属されると、モチベーションやパフォーマンスにも影響が出てしまうので要注意です。
とはいえ謙虚に書きすぎると特筆すべき点が無くなり、採用担当者の興味を惹くことができずにオファーが遠のくことになります。嘘を書くのは厳禁ですが、自分の持つ技術力を最大限アピールすることは忘れないようにしましょう。
SESのスキルシートで差をつけるための工夫
多くのエンジニアが応募してくるSES業界で、どのようにして差別化を図るのでしょうか。ここではちょっとした工夫によって、他の応募者と差をつける方法を紹介します。
資格や技術ブログはプラスになる?自己PRの強化方法
- 資格
基本情報技術者試験や応用情報技術者試験、AWS認定資格などを取得していると、スキルの裏付けとして活用できます。とくにインフラ領域やクラウドに強みを持ちたい人は、関連資格を積極的にアピールするのがおすすめです。英語能力が求められる案件も多いため、TOEICやTOEFLのスコアを記載するのもありです。
- 技術ブログ
個人ブログやQiita、Zennなどで技術発信をしている場合、それをスキルシートにリンクとして載せましょう。日頃から学習し発信する姿勢が評価されることがあります。成果や学びの記録があれば、現場での取り組み方のイメージも伝わりやすいです。
使った技術はとりあえず書く
プロジェクトで使用した言語、フレームワーク、ライブラリ、アーキテクチャ、技術、ツール、開発手法…など何でもいいので書きましょう。スキルシートによっては扱った技術を箇条書きする欄が設けられているので、そこにカタカナやアルファベットで名前がついているものは全て書きましょう。
例えば中々案件が決まらないと悩んでいた方のスキルシートに「セキュリティソフトの導入支援」とだけ書かれていたのですが、何のセキュリティソフトか聞くとZscalerだということが判明して、「それならば!」とZscaler関連の案件に応募したところオファーをもらえたということがありました。
何も書いていないとエージェントやクライアント企業もどのような案件がマッチしているかがわからず案件獲得が難しくなるので、扱ったものは全てスキルシートに盛り込むことを意識してください。
SESのスキルシートに関するよくある質問(FAQ)
スキルシートのフォーマットに決まりはある?
SESのスキルシートに絶対的な決まりはありません。会社によって指定のフォーマットがある場合はそれに沿う形で作るのが基本です。ただ、フォーマットが指定されていない場合でも「プロフィール」「スキル要約」「プロジェクト経験」「自己PR」など、一定の構成は押さえましょう。そのほうが読み手にとってわかりやすくなります。 逆に独自フォーマットで書くとエージェントが読み慣れていないせいでマッチする案件を探しづらくなることもあるため、フォーマットで独自性を出すのはおススメしません。
書くべきスキルが少ない場合はどうする?
「書くことがなくてスキルシートがスカスカです」という人は案外多いですが、本当に書くことが無い場合はほとんどなく、ヒアリングをしていくとアピールできる点が見つかることが大半です。スキルシートの添削をしてくれるエージェントを使ったり、最近だとChatGPTのようなチャットベースの生成AIを使って壁打ちすることで書くべき内容を見つけることができるのでおススメです。
未経験でもスキルシートを作るべき?
未経験であっても、スキルシートは大いに役立ちます。理由は、大枠だけでも「自分のできること・学んできたこと」をまとめることで、面接でのアピール材料となるからです。異業種からの転職の場合は、前の業種のドメイン知識を活かすことができる案件が見つかる可能性もあるため、どのような業種でどのようなことを経験してきたのかは必ず書くべきです。また、自主的に学んできた姿勢やリーダー経験はどのような案件でも評価されるため、SESの現場でのポテンシャル評価につながる可能性があります。
まとめと次のアクション
ここまで、SESエンジニアのスキルシート作成方法から、NGポイントや差別化の工夫、実際の体験談に至るまで幅広く解説しました。SESのスキルシートは、あなたの実務経験や技術力だけでなく、これからのキャリアビジョンや学習姿勢を伝える絶好のチャンスにもなります。形だけの記入ではなく、自分ならではの経験を具体的に描き出すことで、面接担当者の目に留まりやすくなります。
次のステップとしては、まずはご自身のプロジェクト経験を忘れないうちに洗い出してみることが大切です。あまり自分では重要だと思わないような業務でも、案件によっては評価されることもあるため、できるだけ細かく書くことが重要です。きちんと準備しておけば、今後の案件チェンジ時に役立ちます。ぜひ、実際にスキルシートをブラッシュアップし、納得できる形で次の面談に臨んでみてはいかがでしょうか。